らいおんはーと

『シャッターアイランド』見てきました。
す　ご　く　良　か　っ　た　！　！　！　
伏線の張り方が上手いなぁと…
映画上映時の観客への挑戦状のような演出も、本格派ミステリのようでミステリー好きの心をくすぐります。
刑事が謎と事件を解決！みたいなエンターテイメントを想像して行くと期待外れかもしれませんが、充分に見応えのある作品ですので一緒に謎解きするつもりで見ると楽しいと思います。



以下、盛大にネタバレしますので
まだ見ていないけれど見に行きたいと思っている方は絶対に見ないように。
楽しさ半減です。もったいないよ！

最初の違和感は、冒頭のテディが「煙草がないんだ」と言う部分。
それに対してチャックが「船乗りは何でもくすねるから」と軽く返すやりとりが妙に不自然で、まずチャックが相棒ではない線を疑いました。
島についてすぐ頭痛を訴えたテディに、テディ自身に何らかの疾患がある線も考えつつ、ノイスが「お前のせいだよ」と言った部分で、テディ＝レディス疑惑発生。
何度も出てくる妻のドロレスの幻、確か焼死したはずなのに水に塗れて腹部から出血している点がおかしい…ということは殺されたか自殺した？しかし自殺で腹部からの出血は可能性が低い。
ならば、テディが水を怖がるのは自分が妻を殺して水に沈めたからで、記憶を失っている？
しかし「水」というキーワードといえば、失踪したレイチェルが犯した罪が子供を湖で溺死させた事。ドロレスとレイチェルに関わりが？
なんて色々考えていました。

しかし最後に謎が解けると伏線に感嘆。

謎が解けるまで島から出られない、という意味。
やたらと耳についた「びしょ濡れじゃないか、ハニー」と警備員たちが雨にぬれたテディにかける言葉。（湖のほとりで最初にレディスが妻にかけた声と同じ）
コーリー医師のレイチェルを指しての「彼女に必要なのは自分の罪を受け止めることだったのに」という言葉。（罪を受け入れるのはレイチェルではなくテディ）
発見されたレイチェルの「湖で泳いだ後、あなたを想っていた」という言葉と頬にあてられた手。（ドロレスの行動と発言をなぞることでの揺さぶり）
レイチェルの担当医師の所在と印象を聞いたときの患者の顔。
そしてその患者からの「逃げて」という走り書きの意味。（ロボトミー手術が行われる可能性を知っていた）
などなどたくさん。
色んな人の何気ない発言がすべてレディスの為に繋がっている。
特にコーリー医師とチャックの言葉は後から思い返すと…ぐっときます。

ただ、洞窟にいた女性は都合のいい真実を教えてくれる幻覚だったのか（それにしてはあまりにリアル。彼女はテディに触っているし、病院関係者なのか？）。
冒頭で収容所に入る時、「しー」って唇に指をあててテディに合図した不気味な人は何だったのか。彼女の首の傷跡は？
鳥頭なんで、このあたりがわかんなかった。もう一度見たいです。


レディスが子供を発見して湖に飛び込み、３人の子供をいっぺんに抱えようとしたシーンで泣きました。「父親」に本当に弱い。苦笑
「愛してる。私を楽にして」にも泣きました。だらだら泣きました。笑
ディカプリオ、年とってからのほうがいい演技する気がします。

最後のテディは、レディスだったんだろうな。
「怪物として生きるのか、人として死ぬのか、どちらがいいのかわからなくなる」にはやられました。
妻を殺した怪物として生きるより、テディという人として死ぬほうがいいのか。どちらにしても軍人として大勢を殺した彼は既に人間に戻れない自分を諦めたのか。
のどかな庭の風景と、対照的に、これから自分を待つものを受け入れる後ろ姿が切なかったです。

不器用で愚かで、でもだから人間は愛おしい。
不完全とは完全より美しいのではないかと思います。

好みは分かれるのだろうけど、嫉妬するほどいい映画でした。