らいおんはーと

『７ＳＥＥＤＳ』
田村由美／小学館

これ読むと、いつも生きることについて考える。

目が覚めたら嵐の海の上で、知らない人と一緒に漂流していた。
陸地へ上がったら知らない植物と知らない動物が蔓延っていて、人が住める土地ではなかった。
一緒に漂流していた知らない人たちとは何を話せばいいだろう。
ここはどこだろう。
どうやったら帰れるんだろう。
どうやったら帰れるまで生きていられるのだろう。
…帰るって、どこに？

だってどうやら、ここは日本らしいのだ。


こんな感じで物語りは始まる。サルの惑星みたいに。
日本、いや、世界は隕石の衝突で滅亡してしまっていたらしい。
７人の生き残り。
人類を絶やさないために、本人も知らないままに現代版ノアの箱舟に乗せられた、彼女達は『種』。
その『種』は春・夏のＡとＢ・秋・冬の５チームに分けられている。１チーム約７人。
さまざまな境遇で育った人間、生き残る可能性が少しでも高い人間を選びコールドスリープで眠らせ隕石衝突後の未開の地へ放つというプロジェクト。
不毛の大地になった地球で、生きて行ける可能性を秘めた人間たち。
物語は、1チームごとに主人公を変えていろんな視点から不毛の大地を眺める。

帰れない。
生きなければ死ぬしかない。
さて、どうする。


私なら気付いた時点で自害しそうです。
というか、そんなことする前に野生の動物や虫に食われて死んでしまいそうだけど。食われる前にやはり自分で死ぬと思う。
この漫画を読むと、気持ちがどうとかいう以前に、動物的に『生きる』ことについて考えさせられる。
生き残るためには何が必要なのか。そこでは小手先の技術など役に立たない。電気も水道もガスもない。コンピューターが使えても意味がない。自分が生きるために、必要なものを選んで使う。
考えないと、死ぬという現実だけがある。

戦争や紛争で人がゴロゴロ死ぬような場所では、自殺者は少ないんだそうだ。純粋に（きっと本能とかそういう部分で）、生きることに目が向くから。
日本は自殺大国だ。
恵まれて目の前から死が遠ざかったら、自分で命が断てるらしい。笑ってしまう。これはあくまで自嘲の笑みってやつですが。

この漫画の荒れ果てた地球を見ると、笑われてしまうかもしれないけれど、私は『社会』を連想する。不毛で荒れ果てていて生きるのにはだいぶ大変。自分で考えて選び取っていかないと死んでしまう。殺されてしまう。

しかし、物語の中の彼ら彼女らは生きていこうとする。
見たこともないような植物を食べられるかどうか調理してみたり、自然災害や動物や昆虫から身を守る術を考えたり、生き残った人たちとの少しでも楽しくいられるように人間関係どうにかしようとしてみたりする。
どんな状況でも、不思議と笑顔になったり、恋もできたり、する。
こんな状況だから、自分達以外に生き残っているチームがあると知ると、嬉しさで涙が出る。

彼ら彼女らの姿勢に、私はふと考える。自分達が"不毛の大地"で生きていくには、何を考え何を選ぼうか。
田村由美の漫画にはそう考えさせるだけのエネルギーが溢れている。



…なんて、それっぽく語ってみたけどな。
なんせ７ＳＥＥＤの９巻がすげーおもしろかったって話です。なんだろなー、この人の漫画、荒くて乱暴な線がたまんなくいいよな。表情とか、グッとくる。脱帽っていうか、放心。
夏のＡチーム大好きだったよ。うー。